お世話になっている清水焼の作家さんのご厚意で、陶芸体験をする機会を得た。
何を作ろうかと悩むこともなく、抹茶碗と玉露を淹れるのに使う湯冷ましを作った。
普段使っている茶器に、どうという明確な不満があったわけではないのだけれど、
一度は自分の手で作ること、それを使うことを味わってみたいという思いを持っていた。
正確に言うと、すべてを自分一人で作ったわけではない。
ろくろを回して作陶しただけで、高台の削り出しや、釉薬をかけたりといった
仕上がりに大きく影響する工程は、作家さんにお任せした。
それでも、貴重な体験となった。
仕上がった品を手にして感じたことは大きく三点。
理想の茶器のイメージは、結構、曖昧でいい加減だったということ。
初めての陶芸体験で、思い通りの形を作るのは難しいなんてことは当然として、
「あれ、ここどうなってたっけ?」と、手を止めたりしていたのが影響したのか、
全体のバランスがどことなくおかしいように感じる。
ということで、プロの手からなる茶器は、
やはり良く出来ているのだなあということが二つ目。
いまある形は、時を経て、洗練されたものなのだなあと。
三つ目は、「茶器は液体を扱うものなのだ」という、これまた自明のこと。
湯を注ぐ、茶を点てる、急須、湯呑みに移す…
茶器に与えられたそれぞれの役割を全うするには、
ぱっと見ただけでは分からない複雑な曲線が必要なのだなあと。
そんなわけで、器を見るポイントが少し変わった。
そして、お茶を愉しむという大きなテーマの中に「茶器を作る」という
新しい切り口が加わった…際限なく広がるなあ。
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