「茶畑に行かねば」…と思うようになったのは、いつの頃か。
ブログやSNSといったメディアが普及したことで、
小売店さんのみならず、茶農家さんの情報を知ることが出来るようになった。
が、その「情報」は、あくまで画像、動画、テキストに過ぎず、香りもなければ、温度もない。
お茶好きというならば、一度は生産の現場に足を運ばなければならない。
お茶に関する「情報」を「体験」によって得たいという欲求が
今シーズンの新茶の生育とシンクロするようにグングン高まっていたところ、
以前、このブログでご紹介させていただいた「森井ファーム」さんの茶園に行く機会を得た。
新茶の収穫が始まって間もない、4月29日のことであった。
「香味の良い良質な茶は、比較的冷涼な河川の上・中流域の
朝霧のたつような地域で生産される」…と言われているが、
森井ファームさんの茶畑も、そんな条件が揃う、京都府南部、木津川市加茂町にある。
平坦部よりやや高い、山間部の傾斜を活かした畑。
森井さんのブログやSNSのページで池があることは知っていたが、
五感で得る「景色」の情報は、格別だなと。
(当然、このブログでもすべて伝わるわけではない)
宇治茶農家・四代目のご主人と奥様。
畝を挟んで、可搬型の摘採機を支えながら、注意深く新芽を刈り取る。
時期によって、お手伝いを頼むものの、基本的な作業は、ご夫婦でされるとのこと。
加茂地区は、「かぶせ茶」の産地として知られる。
遮光率の高い資材を被せる、「被覆栽培」を行うと、
チャは、わずかな日光を効率良く吸収するために、葉の面積を早く拡大させようとする。
結果、葉の厚みは薄く、葉脈の分布は粗になり、柔らかい新芽が育つ。
チャの旨味成分であるテアニンは、日光を受けるとカテキンに変化するが、
遮光することで、変化は抑制され、テアニンの旨味が残る。
被覆の効果は、味の異なる「かぶせ茶」の生産のみならず、
防霜、摘採時期の調節など、複数の目的もあるとか。
限られた土地、労働力を有効活用するための知恵と言えるだろう。
新茶の収穫は、新葉が4~5枚程度開いてから。
実際に摘採するのは、「一芯三葉」と呼ばれる上の部分だけ。
理想は、あくまで手摘みとされているが、極めて効率が悪い。
では、機械による収穫が効率的かというと、「そんなに単純なことではない」と知った。
古葉や木茎が混じらないように、摘採する畝をキレイにする必要がある。
屋外なので、当然、風が吹けば、周辺の木々から葉が舞い落ちてくる。
じゃあ一気に刈れば良いと、作業を急ぐと粗くなる。
機械はあくまで道具。道具である以上、コツ、ワザ、経験が求められる。
この日、新茶の収穫を手伝いに行ったボクと息子、友人のナカヤマさんは、
森井夫妻の職人的作業に見惚れながら、畝を行ったり来たりしたのであった。
お手伝いの内容は、作業を進めるご夫婦の先を行き、
摘採箇所にある異物を取り除くことと、摘んだ葉の入った袋の運搬。
陽の当たらない場所に、積み重ねないようにやさしく置く。
ふわっと広がる摘みたての茶の香りを忘れることはないだろう。
(何度も袋の中に飛び込んでみたいと思ったが、耐えた)
この日、収穫した茶葉は、324キロ。速やかに、隣町、和束町の製茶工場へ。
特別に何をしたというわけではなかったものの、実に感慨深かった。
「どうか美味しいお茶となって、誰かの気持ちを潤しますように」
と、まるで茶農家さんの気分になって畑に戻ると、
森井さんのご家族、友人の皆さんがランチの用意を。
茶畑の中で、いただく食事は格別(それ以外の表現を思いつかない)。
御礼とばかりに、友人のナカヤマさんが、
前日に製茶したばかりという森井ファームさんの「新茶」を淹れて、
「うまい!」
「茶を淹れた人の腕?」
「いや、茶を作った人の腕でしょう!」
「では、その両方で!」
と、幸せなシークェンスの会話を(笑)
新茶の収穫時期にも関わらず、さまざまな「体験」をさせていただいた
森井ファームさんからのギフト3点
(以下、森井さんへのメッセージとして)
1、新茶のセット
森井さんのお茶は何度か買わせていただきましたが、
やはり今回の体験もあって、いつもに増して美味しく感じました。
「生産者の顔を見て買う」から、「生産者の仕事を見て買う」に
一歩ステージが上がったのでしょうか。
2、新茶の天ぷら
森井さんに「好きなだけ摘んで帰ってください」と言われて、
濡らしたキッチンペーパーと共に渡された袋に詰めた新芽。
茶の天ぷらがこんなに美味いものとは知りませんでした。
3、息子への言葉
我々が畑に着いた時、作業の合間、荷積みが終わってから、
製茶工場から戻った時、畑を離れる時と、
都度、お二人がかけて下さった「ありがとう」の言葉が、
息子には特別な響きとなって残ったようです。
成長していくうちに「ややこしい」時期を迎えることになるかと思いますが、
暮らしの中にお茶がある限り、体験させていただいたことは忘れないでしょう。
また機会があれば、お邪魔させていただきたいと思います。
ありがとうございました。
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